コンデンサを正しく安全にお使いいただくための
コンデンサ特性の基礎知識 ~静電容量~

はじめに

コンデンサは電気回路や電子回路において最も基本的で重要な部品の一つです。回路設計、メンテナンス、品質を担うエンジニアの皆様にとって、コンデンサの特徴や特性に関する知識を習得することは、たいへん重要です。

コンデンサにはさまざまな特性がありますが、コンデンサが使われる電気的条件や環境によって変化するため、仕様書やデータシートなどの限られた媒体から的確に特性を把握することは困難です。コンデンサの特性を正しくご理解いただくことは、コンデンサを安全にお使いいただくことにもつながります。本編では、事例やデータを交えてコンデンサの特性の基礎知識をご説明します。

目次

〜静電容量〜

容量は電荷を蓄える能力を表す物理量

真空中で金属などの導電性の平板を並行に並べて電圧を加えると、平板に異種同量の電荷(electric charge)が蓄積されます。このとき平板に挟まれたスペースには電界(electric field)ができます(図1)*01 ,02

平板間に加えられた電圧をV、平板間の距離をdとすれば、このときできる電界の大きさEは式(01)で表されます。

図1
導電性の平板に蓄えられる電荷Qと電界E

電界をプラスの電荷から出てマイナス電荷へと向かうベクトルと考えて、電気力線という電界の方向を描いた仮想の線を考えると、平板からはQ / ε0[本]の電気力線が出ています*03 。電気力線の面積密度は、電界の大きさに等しくなるため、平板の面積をS[m2]とすれば、式(02)の関係にあり、電源により充電された平板上の電荷Q は式(03)で表わされ、平行平板は「電荷を蓄える」機能をもっていることがわかります。

式(03)の電荷Qを印加電圧Vで割ると、単位電圧当たりの電荷量を示す値C0が得られます(式(04))*04。この値は電荷を蓄える能力を示す物理量として容量(capacitance)と呼ばれます。さらに真空中にある平行平板コンデンサの容量C0は式(05)で表されます。

電荷Q、電圧V、容量Cとの関係は、コンデンサを水槽(タンク)に見立てて説明することができます(Water Tank Analogy)。図2で、タンクの貯水量Wはタンクの底面積Sと水位hの積です。貯水量を電荷、水位を電圧と考えると、静電容量はタンクの底面積と解釈できます式(06, 1-07)。つまり、蓄えられる電荷Qは電圧Vに比例し、その比例定数が容量Cになります。

図2
コンデンサをタンクに見立てた原理図
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誘電体は誘電分極を起こす絶縁物

実際のコンデンサの電極は何らかの絶縁体で隔てられており、その素材は「誘電体(dielectric)」と呼ばれています。誘電体は、絶縁体として機能するだけでなく、コンデンサがもつ多くの特性に影響します。

誘電体と誘電分極

平行平板コンデンサの電極間に絶縁物を入れ、電圧Vを印加すると、絶縁物は電極間の電界中にさらされます。絶縁物に電圧を印加しても電流は流れませんが、電界により絶縁物の原子はプラスの電気を帯びた部分とマイナスの電気を帯びた部分に分かれます*05。(図5)。

すなわち外部からの電界によって、絶縁物の中に外部電界E (=V/d)とは逆の電界が誘起されて電気エネルギーが蓄えられます。この現象を誘電分極と言い、誘起された電界を誘起電界(E')、誘電分極を起こす絶縁物を誘電体と呼びます。

図5 誘電分極のイメージ
図5
誘電分極のイメージ

誘電体のやくわり

誘起電界によって外部電界が弱められてしまうため、電極間の電圧Vは小さくなります。小さくなった電極間電圧を元の電圧に戻すまで(電界の強さをV/dに維持するように)電源から電荷を追加補給すると、より多くの電荷が溜まります。つまり電極間に誘電体を入れることで同じ電圧でも蓄える電荷を増やすことができます。誘電体がない場合の容量C0は式(11)のように表されますが、誘電体を入れることで蓄えられる電荷がεr倍増加したと考えると、誘電体を入れたときの容量Cは式(12)となります。

誘電体の種類*06

誘電体を用いることでコンデンサの容量を大きくできます。容量を大きくできる度合いは真空の誘電率との比で表される無次元の値で表され、これを比誘電率(relative permittivity)と呼びます。コンデンサに使われる誘電体の比誘電率を表1に示します。

表1 主なコンデンサに使われる誘電体
表1 主なコンデンサに使われる誘電体
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容量の単位と記号のルール

容量の単位

容量の単位は、イギリスの物理学者マイケル・ファラデー(Michael Faraday)にちなんでファラド(Farad : Fと略す)という単位が使われています*10。1ボルト[V]の電圧で1クーロン[C]の電荷がコンデンサに蓄えられたとき、そのコンデンサは1ファラドの容量を持つと定義されます。すなわち、1F = 1Q/Vです。実際の回路で使われるコンデンサの容量は1ファラッドよりはるかに小さいため、通常はµ(マイクロ)、n(ナノ)、p(ピコ)の3つの接頭辞が使用されます(表2)。

表2 容量に使われる接頭辞
表2 容量に使われる接頭辞

容量値のルール

コンデンサの容量を表す数値は、IECのE系列に沿った値が決められており、E3系列またはE6系列がよく使われています。表3に系列ごとの容量値をまとめました。

E系列のEは指数(Exponent)のことで、E6系列の場合は、定義式の 6√(10n) (10のn乗の6乗根) のnに0から5までの6個の数字を入れていくことで容量値を決めています。E:系列は、表3に示したE3、E6、E12の他に、E24、E48、E96、E192があります。

各系列の容量値は、容量許容差と関係しているため、電解コンデンサなどの容量許容差が±20%のコンデンサではE6系列、±10%ではE12系列が使われます。

表3 容量値の系列例
表3 容量値の系列例

多様な容量値を表すために容量を表記する記号が決められています。具体的には容量値の2ケタの数字と乗数を組み合わせています。乗数はpF(ピコ・ファラド)を基にしています。このルールはどのコンデンサにも共通です。

100μFの場合、10μFは 100×10-6Fです。この接頭辞をp(10-12)で書き換えると10×107pFとなるので乗数は"7"です。これに容量の第1数字の1と第2数字の0を組み合わせた"107"が100μFの容量記号です*11

コンデンサの容量値が100[pF]以下の場合では、表示されている数字をそのまま読みます。100[pF]では、表示が「101」と「100」の2パターンあるので注意が必要です。また10[pF]未満では「R」を小数点に使います。2.2[pF]では"2R2"と書きます。

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注意したい事柄

コンデンサは、ピコ・ファラド(pF, 10-12ファラド)から1ファラドの極めて幅広い容量範囲をカバーしています(図7)。総じてアルミ電解コンデンサが大容量の範囲をカバーしていますが、近年ではセラミックコンデンサやフィルムコンデンサにおいても1mF(1000μF)クラスの大容量を持つ製品があります(図7)。

図7 主なコンデンサの種類と容量範囲
図7
主なコンデンサの種類と容量範囲

公称容量CNと許容差

コンデンサの公称容量CN (nominal capacitance)は設計値です。コンデンサに表示されている容量は公称値で実際の値ではありません。実際の容量値*15と公称容量には差があり、これを許容差(tolerance)と呼びます。一般的に許容差は公称値との偏差率で表され、-20%から+80%の範囲で設定することができます(表4)。

たとえば公称容量100μFのコンデンサで許容差が±20%の場合、そのコンデンサの実際の容量は80μFから120μFの間で保証されています。

通常は許容差「J(±5%)」「K(±10%)」「M(±20%)」のコンデンサが使われます。フィルムコンデンサ、マイカコンデンサ、温度補償用セラミックコンデンサなどでは、許容差の小さい(容量の精度が高い)製品もあります。ただし容量が極めて小さいコンデンサでは、10pF±1pFのように許容差を値で表されることもあります。

表4 コンデンサの容量許容差
表4 コンデンサの容量許容差

容量の温度特性

静電容量は温度によって変化します。ただし、コンデンサによって変化の様子と大きさはさまざまです。これは各コンデンサの誘電体や電極の性質や構造が違うためです。温度補償型セラミックコンデンサやフィルムコンデンサの温度変化は小さいですが(図8, 9)、高誘電率系のセラミックコンデンサや電解液を使用したアルミ電解コンデンサには非常に大きな温度変化を示すため 、バイパス回路、デカップリング回路などの容量変化がさほど問題にならない箇所に使われます。

図8 容量の温度特性 (温度補償型セラミックコンデンサ)
図8
容量の温度特性*16, 17
(温度補償型セラミックコンデンサ)

C0G : 温度係数0±30ppm/℃
U2J : 温度係数が-750±120ppm/℃

図9 容量の温度特性 (フィルムコンデンサ)
図9
容量の温度特性*18
(フィルムコンデンサ)

PP : ポリプロピレン
PET : ポリエチレンテレフタレート

[容量の温度係数 T]

容量が温度に対してほぼ直線的に変化する場合には、温度に対する容量変化の傾きを温度係数(T : temperature coefficient)と呼び、式(14)で定義される係数が使われます。具体的には、基準温度*19から温度が1℃変化したときの容量変化を百万分の1の単位(ppm/°C : parts per million per °C)で表します。温度係数は種類1 (Class1) に分類される温度補償型セラミックコンデンサやフィルムコンデンサで使われます(表5, 1-06)。温度が上昇すると容量が大きくなる場合、TCは正の値となり "P "で表現されます。温度が上がると容量が小さくなる場合は、 Tは負の値になります。

表5 温度補償用セラミックコンデンサの温度係数
表5 温度補償用セラミックコンデンサの温度係数
表6 フィルムコンデンサの温度係数*20
表6 フィルムコンデンサの温度係数
[容量の温度変化率]

高誘電率系のセラミックコンデンサや電解液型のアルミ電解コンデンサでは、容量値が温度に対して非直線的に変化します(図10)。このような場合は、式(15)で定義される容量の温度変化率を用いて特性を表します。

図10 高誘電率系セラミックコンデンサ(X5R, Y5V) と電解液形アルミ電解コンデンサの容量の温度特性
図10
高誘電率系セラミックコンデンサ(X5R, Y5V) *21, 22
電解液形アルミ電解コンデンサ*23の容量の温度特性*24

容量の周波数特性

周波数が高くなるとコンデンサの容量は小さくなります。これは周波数が高くなると誘電体の誘電率が小さくなるためです。

前nで述べたように、誘電体の中で分極が起こることで電荷を貯めることができます。ただし分極を起こすには時間が必要です。低周波(家庭用の50Hzや60Hzの交流)では、電圧の変化に分極が追い付いて来るので、誘電体に固有の誘電率に従って容量が発現します*25

しかし、電圧の方向が1秒間に100万回(1MHz)、何億回(無線周波数領域)のサイクルで入れ替わるようになると、電界の変化に分極が追いつけなくなり、完全な分極状態になる前に前に電場が反転してしまいます。その結果、誘電率が小さくなります(図11)。

図11 誘電率の周波数依存性を表す模式図
図11
誘電率の周波数依存性を表す模式図 *26

容量が減少する程度は、コンデンサの電極や構造にも依存します。一般に金属を電極とするセラミックコンデンサやフィルムコンデンサは、容量変化が小さく、電解液を使ったアルミ電解コンデンサでは大きくなります(図12, 13)。

図12 フィルムコンデンサの容量の周波数特性
図12
フィルムコンデンサの容量の周波数特性
図13 アルミ電解コンデンサの容量の周波数特性
図13
アルミ電解コンデンサの容量の周波数特性

容量の経時変化

コンデンサを使っていくと容量が変化することがあります。このため、各コンデンサはリプル負荷試験などの寿命試験で容量変化率を規定しています。

当社のネジ端子形アルミ電解コンデンサでは、カテゴリ上限温度の雰囲気下において、定格電圧を規定時間印加した場合*27 、容量変化は初期値の±15%以内であることを保証しています(図14)。経時で容量が変化するのは、温度と電圧による電解液の減少や導電率の増加が起きるためです。

蒸着電極形のフィルムコンデンサでは、自己修復作用*28 (セルフヒーリング, self-healing)によって蒸着電極が蒸散し、電極の表面積が減少して、容量が低下します。

図14 アルミ電解コンデンサのリプル負荷試験における容量変化率
図14
アルミ電解コンデンサのリプル負荷試験における容量変化率

A : 当社FXW形 400V 30000μF (製品仕様 ΔC/C < ±15% @5000h , 85℃ (1))
B : 当社VGLR形 450V 6800μF (製品仕様 ΔC/C < ±15% @5000h , 105℃ (1))
C : 当社HCGW形 450V 32000μF (製品仕様 ΔC/C < ±15% @2000h , 85℃ (2))

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アルミ電解コンデンサの容量について*29

素子の構造と容量

アルミ電解コンデンサの素子は、誘電体を持つ陽極箔、陰極箔、電解液を染み込ませたセパレータから構成された巻回体です(図15) 。

【陽極箔】基材となるアルミ箔は、厚さ40~140μm、純度99.9~99.99%のコンデンサ専用の軟質箔が使われます。陽極の表面にはエッチング加工による微細な孔が形成されており、大きな表面積を持っています。

耐電圧が概ね160V以下のコンデンサでは、立方体状の孔が三次元的につながったスポンジ 状の表面を形成しており、表面積は80~100倍に拡大されています。

耐電圧が160Vを超えるコンデンサでは、結晶方位をそろえた軟質箔を使い、深さ方向に円柱状の孔(トンネルピット)を形成させます。トンネルピットの直径は約1μm、長さ(深さ)は約50μm程度です。単位面積当たりピットの数はは1cm2あたり数千万個であり、表面積は約30~50倍に拡大されています。

図15 アルミ電解コンデンサの素子の構造
図15
アルミ電解コンデンサの素子の構造

【誘電体】誘電体は、陽極酸化(anodic oxidation)*30 によりアルミニウムの表面に形成した酸化アルミニウムの皮膜です。この誘電体の比誘電率εrは8~10であり、フィルムコンデンサに使われるポリプロピレンフィルムの約4倍です。誘電体の厚さは数十nm~1μmでポリプロピレンフィルムの1/10~1/3ですが、厚さ1μm当たりの絶縁破壊電圧が高く(>500V/μm)、生産性にも優れています。

この誘電体には整流性があります。アルミ金属側(アノード側)を陽極にして電圧を印加しても小さい電流しか流れませんが、反対側(カソード側)を陽極にすると大きな電流が流れます。この整流性のメカニズムは古くから研究されていますが確定的なものはありません*31 。アルミ電解コンデンサに極性があるのは、誘電体の陽極酸化皮膜の性質に由来しています。

【電解液】微細な孔の表面にも誘電体層が形成されているため、導電性の電解液を孔の内部まで含浸させています。電解液は誘電体表面に接して電荷の移動の電路として機能します。このため電解液は真の陰極になります。すなわち電解液は、陰極として陽極箔の容量をロスなく引き出し、誘電体を保護し欠陥部を修復する機能を持っています。

【アルミ電解コンデンサの容量】以上のことから、表面積が大きい陽極と、比誘電率が大きくて薄い誘電体が、アルミ電解コンデンサの大容量の特長を実現しています。一方で、負極の集電体として機能する陰極箔にも容量が存在します。陰極箔の表面がわずかにエッチングされており、極めて薄い自然酸化膜で覆われているためです。したがってアルミ電解コンデンサの静電容量は陽極箔と陰極箔の容量が並列に接続した構成になっており、図16に示す等価回路で表すことができます。

図16 アルミ電解コンデンサの等価回路
図16
アルミ電解コンデンサの等価回路*32

温度による容量の変化

アルミ電解コンデンサの容量は、温度の上昇に伴って増加します。低温では容量が大きく低下する特徴があります。これは主に電解液の特性に起因しています。

すなわち、高温では、電解液の粘度が小さくなって孔の奥まで浸透し、導電性も上がるため陽極箔が持つ容量を効率的に引出すことができます。

逆に低温では電解液の粘度が低下し、導電性も低下するため容量が低下します。概ね-20℃以下の低温では容量が数十%低下します*33。容量の低下は一律ではなく、コンデンサの定格電圧によっても異なります。また定格電圧の高いコンデンサは容量低下が大きくなる傾向があります(図17)。このため、品種によって下限の動作温度が規定されていますのでご注意ください*34

図17 電解液形アルミ電解コンデンサの容量の温度特性
図17
電解液形アルミ電解コンデンサの容量の温度特性

当社VGR形
A : 350V 5600μF (製品サイズ Φ77×124L)
B : 450V 3300μF (製品サイズ Φ77×124L)
C : 500V 5600μF (製品サイズ Φ90×167L)

周波数による容量の変化

アルミ電解コンデンサの構造は単純な並行平板ではなく、電解液で満たされた微細な孔が、容量と抵抗による複雑な回路を形成しています(図18)。

コンデンサを通過する交流の周波数が低いときは、誘電率の低下は起こらず微細な孔の奥にある容量成分も容量性リアクタンスとして機能します。しかし周波数が大きくなるとその機能が失われて、見かけ上の容量が低下します*35。また低温では電解液の抵抗が大きくなるため、この以降はさらに顕著になります。

図18 アルミ電解コンデンサの構造と等価回路の模式図
図18
アルミ電解コンデンサの構造と等価回路の模式図

大容量のアルミ電解コンデンサで注意したいこと:再起電圧

十分に充電されたコンデンサを短絡させて端子間の電圧をゼロにしても、その後短絡を解除すると(開放しておくと)、端子に再び電圧が発生します。これを再起電圧(recovery voltage)と呼びます*36

高耐圧で大容量のアルミ電解コンデンサでは40~50Vにもなることがあり、配線時にスパークしたり、半導体の破壊を招いたり、感電することもあります*37

【再起電圧の発生】充電されたコンデンサには、それぞれの電極に電荷が溜まっています。電極の電荷によって、誘電体の分子が誘電分極(dielectric polarization)して、誘電体にも電荷が蓄えられています*38(図19)。

コンデンサを放電すると、電極に蓄えられた電荷は瞬時に消滅して端子間の電圧は見かけ上ゼロになります。しかし誘電体の双極子分極は維持されたままです(図20)。

コンデンサの放電が不十分な状態(放電時間が短い場合)でコンデンサを開放状態(オープン)にすると、誘電体に残った誘電分極の電荷によって電極に再び電圧が誘起されます(図21)。つまり誘電体に蓄えられた電荷が染み出して端子に再起電圧を発生させます。

通常、再起電圧の発生は1~3週間程度でピークとなり、その後徐々に電圧が低下します。誘電体には抵抗成分(もれ抵抗)があり、これを通じて放電が起こって分極した状態が緩和されるためです。

図19 充電時の電荷の状態
図19
充電時の電荷の状態
図20 放電直後の電荷の状態
図20
放電直後の電荷の状態
図21 再起電圧の発生
図21
再起電圧の発生

当社では、コンデンサを検査した後、放電してから出荷していますが、その後の納入までの間に再起電圧は発生している場合があるのでご注意ください。コンデンサを取り扱う前には100Ω~1kΩ程度の抵抗をコンデンサの端子間に接続させ、蓄積された電荷を放電させることで、再起電圧の発生を抑えることができます。なお当社では、放電用のアタッチメントを端子に取り付けたり、放電用シートを同梱して出荷することも可能ですので、お問い合わせください。

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容量のまとめ

コンデンサは、誘電体と電極から構成され、電気エネルギーを静電気として物理的に電荷を蓄えるデバイスです。

コンデンサの容量とは、

  • 蓄えられる電荷は電圧に比例し、その比例定数が容量です。
  • すなわち、容量は単位電圧当たりの電荷量を示し、電荷を蓄える能力を意味する物理量です。
  • 誘電体は電界の中で誘電分極を起こし、コンデンサの容量を大きくします。誘電体が容量を大きくする度合いは、比誘電率で表されます。
  • 実際のコンデンサの容量は、長期間の使用や、温度・周波数によって変化します。
  • アルミ電解コンデンサは大容量コンデンサの代表格ですが、表面積が大きい陽極と比誘電率が大きく薄い誘電体により大容量を実現しています。

監修/飯田 和幸
エーアイシーテック株式会社 ゼネラルアドバイザー

1956年埼玉県生まれ。
日立化成株式会社、日立エーアイシー株式会社にてコンデンサの製品開発と高機能化、コンデンサ用の金属材料や有機材料開発、マーケティング業務に従事。
広報誌、業界誌、各種便覧等にコンデンサに関する記事を寄稿。
2005年から2015年まで株式会社 日立製作所 技術研修所でコンデンサの使い方に関する講座を担当。
2020年よりエーアイシーテック株式会社 ゼネラルアドバイザー。

【主な寄稿・登壇実績】
  • 「タンタル電解キャパシタ」
    電気化学会編 丸善 電気化学便覧 第5版 15章 キャパシタ 15.2.4節 b (1998)
  • 「タンタル・ニオブコンデンサの開発動向と材料技術」
    技術情報協会セミナー 2008年6月
  • 「鉛フリー対応表面実装形フィルムコンデンサ MMX-EC, MML-ECシリーズ」
    日立化成テクニカルレポート 48号 製品紹介 (2007)
  • 「電子機器用フィルムキャパシタ」
    丸善 キャパシタ便覧 第5版 5章 フィルムキャパシタ 5.2項 (2009)
  • 「新エネルギー用大型フィルムコンデンサMLCシリーズ」
    新神戸電機株式会社 新神戸テクニカルレポート 22号(2012)