アルミ電解コンデンサとフィルムコンデンサのアプリケーション(2)
~アプリケーションのケーススタディ 7選~
はじめに
パワーエレクトロニクスにおいてコンデンサは、エネルギー貯蔵やフィルター、デカップリングなどの機能に必要不可欠のデバイスです。ただしコンデンサにはさまざまなタイプがあり、同じ静電容量と定格電圧のコンデンサであっても性能は異なります。そしてコンデンサの選択を誤ると、高価な過剰設計になったり、信頼性の低い製品になりかねません。
本稿では、パワーエレクトロニクスに使われる様々なタイプのコンデンサの特徴と機能を説明します。特にアルミ電解コンデンサとフィルムコンデンサのタイプを比較し、それぞれがどのような場面でどのような役割を果たすかをご説明します。具体的には、様々なコンデンサの構造、パワーエレクトロニクスに好適なタイプ、静電容量、リプル電流定格、過渡過電圧 (スパイク電圧)、安全仕様やその他の特性についても詳しく検討します。
『アルミ電解コンデンサとフィルムコンデンサのアプリケーション』
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目次
アプリケーションのケーススタディ 7選
本章では、さまざまな電力変換に使われる代表的な機器におけるコンデンサのアプリケーションをご紹介します。
モータードライブ
モータードライブは、洗濯機、エアコンなどの家電製品に搭載される小型ポンプやモーターから、産業用機械に搭載される大型モーターまで、あらゆるシステムのいろいろなモーターの回転数を制御する装置です。
モータードライブに使われるコンデンサ
このアプリケーションにおけるコンデンサの重要な役割はリプル電流の除去です。アルミ電解コンデンサは、単相・3相の両方でモータードライブのDCリンクで最も一般的に使われるコンデンサです。具体的には、直流ラインのリプル電流を除去して、インバータを安定に作動させるエネルギーバッファーとして使われます。
単相モータードライブの代表的な構成とコンデンサ
3相モータードライブの代表的な構成とコンデンサ
モータードライブのリプル電流には、入力側の低周波リプル(50 Hz~200 Hz)とインバータからの高周波成分(通常8 kHz~20 kHz)の2つの成分があります。このため、それぞれのリプル電流に適した容量とESR特性をもつコンデンサを採用することが大切です。
コンデンサの選び方と使い方
リプル電流はコンデンサを自己発熱させるため、過大なリプル電流はコンデンサの寿命を短くさせます。アルミ電解コンデンサは有限寿命のコンデンサですので、寿命を最大化するための対策が必要です。たとえばプリント基板上のコンデンサの実装位置を可能な限り涼しい場所に配置したり、強制冷却やコンデンサにヒートシンクを取り付けることは有効な対策です。アルミ電解コンデンサには内部構造を改良して放熱性を高めた製品があります。これらの対策を組み合わせることで、コンデンサの寿命を数倍以上も延ばせる可能性があります。
またモータードライブの安定した動作を確保するために、最小静電容量を指定することも必要です。またコンデンサのインダクタンス(ESL)は電圧パルスの発生をさせる可能性があるため、ESLの小さい製品を使用することも大切です。
高電圧モータードライブでは
出力電圧が1200V程度までなら、複数のアルミ電解コンデンサを直列および並列接続させて使用することができます。ただしコンデンサ間の中間電圧のバランスには注意が必要です*01 。このため、アルミ電解コンデンサと並列に分圧抵抗を接続して電圧を均等に分割する必要があります*02。
*01 コンデンサの直列接続において、個々のコンデンサにかかる電圧はコンデンサの絶縁抵抗の比(またはコンデンサのもれ電流の比)に応じて分割されます。しかし分割した電圧のバランスが不均一であると、機器全体の効率が低下し、コンデンサの寿命が短くなりますCLC/TR 50454:2008, Guide for the application of aluminium electrolytic capacitors, CENELEC, Brüssel (2008)
*02 産業機器のようにコンバータが主電源に常時接続されている場合では、分圧抵抗による損失がエネルギーとコストの面で無視できなくなります。さらに、分圧抵抗は熱源としてコンデンサの近くに設置されていることが多いため、コンデンサや他のデバイスにとってリスクになります。
2つの電解コンデンサを直列接続したACドライブシステム
三相電力変換器の回路トポロジー
モータードライブに適した当社製品
プリント基板実装用の長寿命で高電流定格の2端子、3端子、4端子の基板自立形アルミ電解コンデンサを提供しています。また放熱性を高めた製品やヒートシンクを考慮した構造のコンデンサも品揃えしています。産業用モータードライブ向けには、大型のネジ端子形アルミ電解コンデンサをご用意しています。
再生可能エネルギーシステム
今世紀初頭から太陽光発電や風力発電の設置容量は、グローバルで飛躍的に伸長しています。これらの再生可能エネルギーシステムではハイパワーの電力変換技術が使われており、その中核であるインバータには高耐圧で大容量のコンデンサを組み込む必要があります。
風力発電や太陽光発電のインバータは直流電流を交流電流に変換する機能を担いますが、同時に電力変換の高効率化、長期間の稼働の安定性や信頼性の向上が求められています。このため、電力変換によって生じるリプル電流がインバータに流入するのを防止する役目をもつコンデンサ(DCリンク)にも高い信頼性が必要です。
再生可能エネルギーシステムに使われるコンデンサ
ソーラーインバータ
ソーラー・インバータは、ソーラー・パネルで発電された直流電力を、電力網や家庭用システムで使用可能な交流電力に効率的に変換するための装置です*03 。図4に一般的なソーラーインバータの基本構成を示します。ソーラーバッテリーからの直流電力は、EMIフィルターを通過して昇圧コンバータに送られ、DCリンクのコンデンサを介してインバータに電力を供給します。すなわち、ソーラーインバータは、ソーラーパネルと電力系統とのインターフェイスとして機能します。図1に示すように、ソーラーインバータ内部では、2つの電力変換処理が行われています。
*03 発電システムの規模にもよりますが、ソーラーインバータの定格電力は、家庭用インバータは最大3kW程度、連結型ストリング・インバータは最大10kW、大型セントラル・インバータは最大500kW程度です。
ソーラーインバータの基本的な構成とコンデンサ
ソーラーパネルの典型的な最大出力電圧は600V、800V、1000Vです。アルミ電解コンデンサでこの電圧範囲をカバーするには、コンデンサの直列接続が必要です。しかしアルミ電解コンデンサを直列接続する場合、2つの直列コンデンサ間の中心点で電圧のバランスをとることが重要です。ただしバランス抵抗器などを使用することで大幅な効率低下を引き起こす可能性があります。
ソーラーインバータにおける電圧変換をスムーズに行うために十分なエネルギーを生成するDCリンクコンデンサは重要です。電力範囲、最大許容電圧、利用可能なスペース、寿命要件、および設計コストに応じて、アルミ電解コンデンサまたはフィルムコンデンサのいずれかを使用することができます。どちらのタイプも当社から入手できます*04。
*04 エネルギーバッファの大きさは、バッファに蓄えるべきエネルギーの量によって決まります。これはソーラーインバータの定格電力と、ソーラーパネルからの電力と配電系統への電力との間のミスマッチの持続時間に関連します。目安として、この時間が1秒未満であれば、フィルムコンデンサかアルミコンデンサを使用することができます。それ以上であれば、電気二重層キャパシタ(EDLC)や電池など他の蓄電デバイスを検討する必要があります。
風力発電インバータ
太陽光発電と異なり、風力発電は入力が交流であるため、ACDCコンバータで一旦直流に変換した電力をインバータに送り込みます。大規模な風力発電システムでは、洋上や山間部などに設置されることが多いため、できるだけ保守や交換を必要とする部品を少なく設計したいとの要求があります。またPMSG方式の発電機では、無負荷誘起電圧が風車回転数に比例して高くなるため、突風等により風車回転数が上昇し、定格以上の直流電圧が発生する危険があります。従来、DCリンクコンデンサにはアルミ電解コンデンサを直列接続して使用していましたが、定期的な保守や交換が必要であり過電圧に対する耐性が低いことから、最近の大型風力発電用インバータでは、大容量のフィルムコンデンサが使われるケースが増えてきました。
風力発電インバータの基本的な構成とコンデンサ
当社は、2端子、3端子、および4端子の基板自立形を、30mm x 40mm~45mm x 100mmのケースサイズで提供しています。メインインバータ向けには、最大90mm x 220mmのケースサイズのネジ端子形を提供しています。
サーボドライバー
サーボドライバーは、モーターからのフィードバックに応じてインバータを制御し、モーターの回転数・トルク・電流などの状態量を任意に制御する装置です*05,*06,*07。モーターが負荷トルクに応じた仕事を行うとき、サーボドライバーはモーターが行う仕事に見合うだけのエネルギーをモーターに供給します。エネルギーは瞬時にやりとりされるので、パワー(仕事率)をリアルタイムに制御することになります。そのため、サーボドライバーは電力変換回路と制御部から構成されます。電気エネルギーをモーターの回転エネルギーにすると損失が生じますが、近年ではパワーデバイスの低損失化(オン電圧の低下)が進んでおり、電力変換回路のエネルギー効率は95%を超えています。
*05 2020年 アナログ集積回路研究会、日本パワーエレクトロニクス協会
*06 藤本他、日 本 ロ ボ ッ ト学 会 誌Vol.25 No.7, pp.1036~1039, 2007
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj1983/25/7/25_7_1036/_pdf
*07 産業用途のサーボドライバーでは上述の構成が一般 的ですが、コンバータ回路を省きバッテリーを直流電源として利用するものもあります。また、位置制御の機能のないもの もあります。さらに安価な簡易ドライバーには、インバータの代わりにリニアアンプを用いるもの、ロータリエンコーダの代 わりにアナログポテンショメータを用いるもの、マイコンの代わりにオペアンプを用いるものなども存在します。出力の小さいサーボモーターでは、サーボモーターとサーボ ドライバーを一体化したものもあります。
サーボドライバーに使われるコンデンサ
図6に一般的な産業用サーボドライバーの基本構成を示します。交流の入力電力はコンバータ回路で整流され、DCリンクのコンデンサを介して直流に変換されてインバータに電力を供給します。
サーボモーター、サーボドライバーの構成
サーボドライバーのDCリンクで最も一般的に使われるコンデンサは、アルミ電解コンデンサです。これはモータードライブと同様に、モーターを駆動するスイッチモードインバータの安定動作を保証するためのエネルギーバッファと、高周波成分を取り除くフィルターとして機能します。
サーボドライバーに適した当社製品
当社では長寿命で高いリプル電流に対応できる基板自立形アルミ電解コンデンサを提供しています。産業用サーボドライバー向けには、大型のネジ端子形アルミ電解コンデンサをご用意しています。
スイッチングモード電源
スイッチング電源(SMPS*08)は、スイッチング方式直流安定化電源とも呼ばれ、様々な電気・電子負荷に電力に直流電力を供給する電力変換装置です*09。
SMPSは、標準的な線形電圧調整方式を使用するリニア電源とは異なり、半導体のスイッチング方式を使用して非調整信号の電圧調整を行います。すなわちパワーMOSFETなどの半導体スイッチがオンの時に電流を導通させ、オフの時に電流の流れを遮断します。このオンとオフ時間比率(デューティ比)をフィードバック回路でコントロールする事により出力を安定化させます*10。商用電源の交流を直流に変換し、小型かつ軽量で消費電力が少なく電力変換効率も高い電源として広く利用されています。
スイッチング電源は、①入力整流器とフィルター(ダイオード整流器とコンデンサフィルター)②高周波スイッチ(パワートランジスタまたはMOSFET)③電源トランス出力整流器、④フィルター(ダイオード整流器とコンデンサフィルター)⑤制御回路(コンパレータ、パルス幅変調器)から構成されます(図7)。
スイッチングモード電源の構成
*08 Switching Mode Power Supply
*09 https://electronicscoach.com/switch-mode-power-supply.html
*10 ただしスイッチングのオン・オフの切り替えが高速で行われることからEMIが発生しやすい特徴もあります。
スイッチングモード電源に使われるコンデンサ
スイッチングモード電源にはさまざまな用途がありますが、近年ではサーバー電源での応用が進んでいます(図3-08)。サーバー電源はPFC回路とパワーMOSFETを使った安定化回路から構成され、高電力密度、高効率の出力が可能にしています。
ここでは、小型で長寿命のアルミ電解コンデンサが、PFC回路と安定化電源回路の出力部で直流電圧の平滑とエネルギーバッファーとして使われます。
サーバー電源の構成例とアルミ電解コンデンサ ○
スイッチングモード電源に適した当社製品
当社では、小型・長寿命で高いリプル電流に対応できる基板自立形アルミ電解コンデンサを提供しています。
パルス電源
パルス電源は 通常の電源のように電力を連続的に供給し続けるのではなく、必要なタイミングで出力のON/OFFを行ってマイクロ秒やナノ秒という短時間の瞬間的な大電力を出力する装置です。パルス電源は、X線発生装置、溶接機、エキシマレーザー、紫外線光源、高周波プラズマトーチなどに応用され、半導体製造装置、医療機器、環境関連機器、加速器など搭載されています。
インバータ方式X線発生装置の基本的な構成 *11
*11 インバータで管電圧に応じた周波数の交流を出力し、変圧器で昇圧します。整流された高電圧を検知してインバータにフィードバックすることで安定した高電圧を得ます。
アーク溶接の事例 *12
*12 インバータで溶接電流に応じた周波数の交流を出力し、高周波トランスで昇圧します。整流された高電圧を検知してインバータにフィードバックすることで安定した電流を得ます。
パルス電源に使われるコンデンサ
パルス電源におけるコンデンサの役割はエネルギーバッファです。そのための重要なパラメータは、コンデンサの容量の大きさです。容量の大きさが、電源が生成できる電気エネルギーブーストの大きさに直結するためです*13。
またこのアプリケーションでは充放電が繰り返され、放電におけるコンデンサの電圧降下には注意が必要です。完全放電する場合はフィルムコンデンサが有利です。最大動作電圧の30%から40%の範囲での放電であれば、アルミ電解コンデンサを使用することができます。
*13 コンデンサのインダクタンス(ESL)も重要です、ESLが大きいと過渡信号の発生が増加する可能性があるためです。ネジ端子形の大型コンデンサでは、おおむね13nH以下のESL値が求められます。
パルス電源に適した当社製品
当社は、プリント基板実装用として大容量、長寿命、高放熱設計の2端子、3端子、4端子形の基板自立形コンデンサを提供しています。また産業溶接機、高周波プラズマトーチ、X線装置などの高電圧産業用アプリケーションには、高耐圧・大容量・長寿命のネジ端子アルミコンデンサをお勧めします。
無停電電源装置(UPS)
UPSは、短時間の停電や電圧低下が発生したときに電力を維持するために使用される電源装置です。停電や負荷変動から復旧するまでの間、電池やコンデンサでバッファリングします。UPSにはオフラインタイプとオンラインタイプがあり、停電時の電力レベルや最大動作時間もさまざまです。
UPSに使われるコンデンサ
アルミ電解コンデンサは、オンラインおよびオフラインシステムの両方で、UPSのDCリンクコンデンサとしてよく使用されます。
UPSシステムは、交流の入力電圧を直流電圧に変換します。変換された直流電圧は、バッテリーを充電させつつ、直流電力をインバータに供給します。インバータは直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給します*14。平常時はバッテリーとコンデンサは充電されていますが、コンデンサはバッテリーにリプル電流が流れ込むことを防止して、バッテリーの長寿命化に貢献します。またインバータが高周波で直流をオフにしたりオンにしたりするときに発生する電圧スパイクを吸収する役割も果たします。
短時間の停電や電圧低下が発生すると、バッテリーが放電して電力を供給します。しかしバッテリーは瞬時に十分な電力供給を果たすことが難しいため、コンデンサが放電して初期の電力供給をアシストします。このようにUPSでは平常時にも停電時にもコンデンサが活躍しています。このため、コンデンサにはより多くのエネルギーを蓄える大容量だけでなく電圧スパイクに対する耐久性も求められます。
UPSの基本的な構成(常時インバータ給電方式の事例)*15
*14 入力電圧は通常三相480ボルトです。バッテリーと電気二重層キャパシタを使う場合もあります。
*15 停電時に非常用発電設備が稼働するまで(約5分間)、蓄電池を放電させて、直流の電力を供給します。これをインバータで交流に変換し電力を供給します。
UPSに適した当社製品
UPSには、高耐圧・大容量・長寿命のネジ端子アルミコンデンサをお勧めします。大小を問わず、すべてのアルミ電解コンデンサは経年劣化します。最も自然な劣化は、電解液の乾燥です。その速度は使用温度とリプル電流によって決まります。このためアルミ電解コンデンサを定期的に交換することをお薦めしています*16。
*16 製品の使用条件の範囲内であれば、一般的な交換スケジュールは10年です。もちろん交換寿命はリプル電流の大きさにも依存しますので、UPSシステムの長期信頼性を設計される際には当社までお問い合わせください。
トラクション コントロール システム
トラクション コントロール システムとは、鉄道や自動車の駆動力を制御するシステムの総称です。走行だけでなく、ブレーキ、照明、電力供給をサポートする電気システムも、このカテゴリーに含まれます。
電鉄車両に使われる電気モーターには、適切に制御された電力が必要です。かつてはモーターが使用しない電力を抵抗バンクを通じて放熱していましたが、現在はインバータを使って熱の発生を抑えて、電気モーターへの電力を制御しています。
トラクション コントロール システムに使われるコンデンサ
インバータにはコンデンサが必須です。インバータが電流をオフにすると、架線からの電流はコンデンサに流れてコンデンサは電気エネルギーを蓄えます。インバータが電流をオンにすれば、架線とコンデンサから電流が供給されます。コンデンサに流れる電流は、架線から電流とインバータがオン/オフするときのリプル電流です。
電鉄車両の走行用大型電動モーターの速度制御に使用されるコンデンサにはフィルムコンデンサが使われます。これは高い耐電圧とより低い損失が求められるためです。
電鉄車両の補助電源では、モーターまたは補助電源回路を制御する補助インバータを安定に動作させるエネルギーバッファとしてのコンデンサが必要であり、アルミ電解コンデンサやフィルムコンデンサが使われます。またコンデンサは、インバータの高周波成分が主電源入力を妨害するのを防ぐフィルターとしても機能します。このためコンデンサの選定する上で最も重要なポイントはリプル電流への対応力です*17, *18。
電鉄車両の補助電源の基本的な構成
*17 インバータによって生成される8 k~20 kHzの高周波リプル電流に対応することが求められます。
*18 トラクションにおけるアルミ電解コンデンサは、その動作寿命を最大にするためにできるだけ低温の場所に実装配置する必要があります。強制冷却やヒートシンクへの取り付けをお薦めします。ドライブの安定動作を確保するために、動作温度と周波数を考慮した最小静電容量を指定することが望ましいと言えます。またスパイクノイズの発生に寄与するコンデンサのESLを低くすることも必要です。
電鉄車両の動作電圧は1200Vを超える可能性があるため、アルミ電解コンデンサは直列接続と並列接続させたコンデンサバンクを形成することが一般的です。この場合はコンデンサ間の中間電圧のバランスに注意が必要です。
トラクションに適した当社製品
当社は、高耐圧で低損失のフィルムコンデンサだけでなく、リプル電流に対して優れた性能をもち冷却を最適化するための高い放熱性を持つ大型のネジ端子形アルミ電解コンデンサを提供しています。
おわりに
本稿では、当社のコンデンサが活躍しているパワーエレクトロニクスのさまざまなアプリケーションをご紹介しました。
当社が供給するアルミ電解コンデンサとフィルムコンデンサは、モータードライブ、再生可能エネルギーのインバータシステム、スイッチングモード電源などのDCリンクや、無停電電源装置などのエネルギーバッファーなどに適しています。
コンデンサはパワーエレクトロニクスにおけるキーデバイスであり、当社は確かな技術に裏付けられた設計と管理されたプロセスで製作されたコンデンサを提供しています。当社のアルミ電解コンデンサの推定故障率は約0.3Fitであり⼀般的な半導体デバイスの約1/10の⽔準です。お客さまが開発・製造する機器の機能、性能、品質、信頼性及び安全性を確保するためには、お客様と当社が連携することによって可能となります。
お客さまにおかれましては機器が必要とする要件に適合した品質と信頼性をもつコンデンサを選択していただき、ご使⽤に当たってコンデンサが持つ能⼒以上のストレスを加えないこと、機器に安全設計及び安全対策を実施すること、機能、性能、品質、信頼性及び安全性の評価を使⽤前に充分に実施されることをお願い致します。また個々のコンデンサの具体的な注意事項については当社製品カタログや仕様書をご参照くださいますようお願い致します。
最後までご高覧いただきありがとうございました。ご不明の点がございましたら、ぜひ当社までお問い合わせください。
監修/飯田 和幸
エーアイシーテック株式会社 ゼネラルアドバイザー
1956年埼玉県生まれ。
日立化成株式会社、日立エーアイシー株式会社にてコンデンサの製品開発と高機能化、コンデンサ用の金属材料や有機材料開発、マーケティング業務に従事。
広報誌、業界誌、各種便覧等にコンデンサに関する記事を寄稿。
2005年から2015年まで株式会社 日立製作所 技術研修所でコンデンサの使い方に関する講座を担当。
2020年よりエーアイシーテック株式会社 ゼネラルアドバイザー。
- 「タンタル電解キャパシタ」
電気化学会編 丸善 電気化学便覧 第5版 15章 キャパシタ 15.2.4節 b (1998) - 「タンタル・ニオブコンデンサの開発動向と材料技術」
技術情報協会セミナー 2008年6月 - 「鉛フリー対応表面実装形フィルムコンデンサ MMX-EC, MML-ECシリーズ」
日立化成テクニカルレポート 48号 製品紹介 (2007) - 「電子機器用フィルムキャパシタ」
丸善 キャパシタ便覧 第5版 5章 フィルムキャパシタ 5.2項 (2009) - 「新エネルギー用大型フィルムコンデンサMLCシリーズ」
新神戸電機株式会社 新神戸テクニカルレポート 22号(2012)